利回りノート

家賃の値上げ通知が増えている — 拒否できる人・上げたい大家の法律と実務

公開: 2026年9月17日この記事は時期によって変わる情報を含みます。制度の最新情報は必ず公式サイトで確認してください。

まず相場の現在地を数字で。

  • 東京23区のシングル向きマンションの平均募集家賃は2026年に初の11万円台へ (前年比+12%)。ファミリー向きは平均16.7万円で+13.5%
  • 23区の賃料は13四半期(3年以上)連続で過去最高値を更新中
  • 大家側のコストも上がっています。変動金利の上昇(記事「アパートローンに5年ルールはない」)、 修繕費・保険料の高騰、固定資産税評価の上昇——これを既存の入居者に転嫁したいのが、 値上げ通知が増えている理由です

ここから立場別に。まず借りている人。 値上げ通知が来ても、慌てて出ていく必要も、すぐ応じる義務もありません。

  • 通知に強制力はない:家賃は契約で決まっているので、 あなたが合意しない限り変わりません。「来月から+1万円です」という紙は「お願い」です
  • 払い続ければ住み続けられる:合意できない間は今までの家賃を払い続ければ債務不履行になりません(大家が受け取りを拒否したら法務局への供託という手段まで法律が用意しています)
  • 「応じないなら更新しない」は通らない:普通借家契約の更新拒絶には正当事由が必要で、 値上げ拒否はそれに当たりません(定期借家契約は別。契約書の種類を確認)
  • ただし冷静な損得計算も:いまの家賃が相場より明らかに安いなら、 法的に争って勝てても、大家との関係悪化や将来の退去交渉を考えると段階的な値上げ(例: +1万円→まず+4千円)や更新料の調整で折り合うのが実利的なことも。 引っ越しには数十万円かかります——それとの比較です

次に大家側。法律(借地借家法32条)が値上げの根拠として認めるのは ①土地建物への税負担の増減 ②地価・物価の変動 ③近傍同種の家賃との比較——の3つです。 注意したいのは、「自分のローンの金利が上がったから」はそのままでは根拠になりにくいこと (あなたの資金繰りは入居者の責任ではない、というのが裁判所の立場です)。 武器になるのは③、つまり周辺の募集家賃が上がっている客観データです。

  • 手順:通知→協議→まとまらなければ調停(裁判の前に必ず調停、と法律で決まっています)→訴訟。 ここまで行くのは稀で、実務の大半は更新のタイミングの交渉で決まります
  • 実務の型:更新の3〜4ヶ月前に、周辺の募集事例(同じ間取りの現在の家賃)を添えて、 段階案つきで丁寧に打診する。根拠データがあるかないかで、応じてもらえる率がまるで違います
  • いちばん確実な値上げは入れ替わり:既存入居者との交渉より、 退去後の新規募集で相場に合わせるのが最も摩擦がない方法。 だから空室は損失であると同時に、家賃改定のチャンスでもあります
家賃が変わったら手残りはいくらか計算する